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地方創生を成功させる3つのポイント「海士町はなぜ注目されるのか」

地方創生を成功させる3つのポイント「海士町はなぜ注目されるのか」

「地方創生」などの政府の地域活性化策を批判するのは簡単ですが、疲弊した地方が地域活性化を必要としていることは否定できません。そこで、「まち・ひと・しごと創生会議」でも注目されている島根県隠岐郡海士町の取り組みから、地方創生を成功させる3つのポイントについて考察したいと思います。

目次

1.注目される海士町
2.【ポイント1/3】「守り」の戦略:身を切る行財政改革
3.【ポイント2/3】「攻め」の戦略:島をまるごとブランド化
4.【ポイント3/3】「続ける」の戦略:外部との交流と人づくり
5.【まとめ】地方創生を成功させるには?

地方創生で注目される海士町

平成26年11月6日に開かれた、第3回まち・ひと・しごと創生会議にて、小泉政務官が行った現地視察のひとつとして、海士町が紹介されています(小泉政務官説明資料)。この資料では、海士町は「「守り」の行財政改革の実施、「攻め」の産業創出と島留学」と表現されています。この「守り」と「攻め」がポイントとなります。

島根県隠岐郡海士町は、日本海の島根半島沖合約60kmに浮かぶ隠岐諸島にある、1島1町の小さな島です。対馬暖流の影響を受けた豊かな海と、名水百選(天川の水)に選ばれた豊富な湧水に恵まれ、自給自足のできる半農半漁の島です。「隠岐」と聞けば、後鳥羽上皇や後醍醐天皇が流された島を思い出す人も多いでしょう。人口は2400弱です。本土(島根県の本州側)から海士町までの所要時間は高速船で約2時間、カーフェリーで3時間弱から5時間弱かかります。

山内道雄町長曰く、「超過疎、超少子化、超高齢化」の島であり、「公共事業で生きてきた島」でした。そして、他の地方自治体と同様、三位一体の改革による地方交付税の大幅な削減によって、財政再生団体に転落するかもしれないという危機的状況に直面したといいます。
このような離島がなぜ今注目されることになったのでしょうか。海士町の3つの注目ポイントを考察します。

【ポイント1/3】「守り」の戦略:身を切る行財政改革

第1のポイントは、「守り」の戦略:「身を切る行財政改革」です。給与カットについては、平成16年度は、町長30%、助役、管理職、議員、教育委員20%、一般職員10〜20%の減額。平成17年度は、さらに、町長50%、助役、議員、教育委員40%、職員16〜30%までカット率を下げました。職員数も削減されました。

そもそも、通常は給与カットや人員削減は働き手のモチベーションを下げてしまいますが、海士町の場合は、「日本一安い給料で日本一働く町職員」と言われています。なぜ給与カットを始めとする行財政改革を行っても、職員のモチベーションが下がらないのでしょうか。
その答えの一つは、海士町の戦略には「守り」とともにビジョンがあるからです。給与カットで浮いたお金がどのように使われるのか不透明なままでは、あるいは全て借金返済に回されるのでは、カットされた職員たちは浮かばれません。町長は「給与カットで浮いたお金は“未来への投資”に使う」と宣言しました。

役場の意識改革や組織改革もビジョンを持って行われました。例えば、「お役所仕事」から「行政は民間企業」という職員の意識の転換がうたわれました。そして、次の「産業3課」が設置されました。

 ・観光と定住を担う「交流促進課」
 ・第一次産業の振興を図る「地産地商課」
 ・新たな産業の創出を目指す「産業創出課」

なかでも特徴的な組織は「地産地商課」です。これは「地産地消」の誤植ではありません。「観光客に海士に来てもらい、そこで海士のおいしい農産物、海産物を食べてもらう」だけでなく、「島の産物を地域外に持っていって、地域外の人に買ってもらうこと」を目指しています。そのための“商”です。
これらの産業3課は、町役場ではなく、「承久海道 キンニャモニャセンター」内に置かれています。キンニャモニャセンターは菱浦港ターミナルとしての機能はもちろん、海士町観光協会や海士町漁協の直売店「大漁」も入っている、情報発信・交流地点です。産業3課の存在によって、町が産業政策に力点を置いていることを、町職員だけでなく、町民も、そして外部からやってくる来訪者(町にとっては“外貨獲得”の相手)も理解することができます。
まずは役場から身を削り、ビジョンを持って改革を行うことで、住民や企業などに「本気」を見せたのです。

【ポイント2/3】「攻め」の戦略:島をまるごとブランド化

第2のポイント、海士町の「攻め」の戦略を考察します。
まず、具体的な施策・事業を行うには目指すべき姿・ビジョンが必要です。企業であれば企業理念があるように、自治体では基本構想や総合計画などがあります。海士町の場合、「キンニャモニャ宣言」(第3次総合振興計画)があります(以下、抜粋、下線を加えたのは著者です)。

あらゆる人々との間でさまざまな交流を進め、新しい海士町づくりに行政と住民が力をあわせて取り組みましょう。「人は海士を訪ね、交流を重ねて海士を好きになり、この地を求めて暮らしはじめる。」そんな願いをこの囃子ことばに込め、私たちの取り組みは歩みをはじめます。

生き残りをかけ、まちの自立を目指していかなくてはなりません。そのためには、海士の良さをさらに高め、町外に向けてアピールし、海士町の存在意義をはっきりと打ち出すことが求められているのです。山と海の両方から恵みを受け、自然と共に生活するすばらしさをかみしめ、老いも若きもキンニャモニャを歌い、踊り、健康や農作や大漁を祝い、感謝する町。そんなまちづくりを目指しましょう。

現在注目されている取り組みは、このようなビジョンが施策・事業という形になって現れたものと考えられます。

ちなみに、先ほどのセンターの名前にも付いていた「キンニャモニャ」とは、海士町発祥の隠岐民謡です。この「キンニャモニャ」のような地域独自の言葉や民謡、あるいは後鳥羽上皇の歴史の物語は、非常に重要な地域資源です。「キンニャモニャ」って、何だろう?と、外部の人は必ず疑問に思うからです。疑問に思えば、調べようと思います。そうすると、海士町の歴史文化に到達するのです。このように、標準語にして誰にでも分かるようにするのではなく、あえて地域独自の言語文化を積極的に活用する手があります。地域の「差異化」・「付加価値」と言い換えることもできます。あるいは、「地産地“商”」課のように、見た人が「誤字ですか?」などと言ってもらえれば、「いえいえ、実は・・・」と説明するきっかけとなり、その意味でも海士町は非常に情報発信力の優れた地域であることが分かります。

次に、海士町では、「ないものはない」を合言葉に、さざえカレー、島留学、隠岐牛、CASシステムによる海産物など、「島をまるごとブランド化」する戦略をとっています。例えば、「島じゃ常識 さざえカレー」は、「モノづくりからの地域おこし」を目的として、海士町で日常的にとれるさざえを具材として商品化したものであり、海士初のブランド化を目指して作られたといいます。「サザエの肝もカレーに練りこまれた、ちょっと苦めの面白いカレー」です。現在では年間約2万食を売り上げるといいます。

また、隠岐牛は「島の隠れた名産」です。(有)隠岐潮風ファームによれば、「島生まれ、島育ち、隠岐牛」の定義は、「隠岐島(海士町、西ノ島町、知夫村、隠岐の島町)で生まれ育った未経産の雌牛、日本食肉格付協会で肉質等級が4等級以上の格付けを受けたもの、隠岐牛出荷証明書が発行されていること」です。
同社の親会社は飯古建設であり、島の公共事業を担っていた会社です。先に見たように、町は行財政改革を行い、その結果公共事業が減ったため、建設会社も売り上げが落ち込みました。新しい事業を模索する中、「自分の会社の生き残りだけでなく、島の生き残りのため」にも、畜産業を開始しました。
しかし、離島ならではのハンデがあります。例えば、飼料を島まで運んだり、育った牛を市場に運んだりするには、かなりの輸送コストがかかります。また、牛の肥育について詳しい人材も不足していました。しかしコストに見合うには、1kg2500円以上、最高ランクA-5等級でなければなりません。
同社は2年をかけて育て、市場に隠岐牛を出荷すると、初めての競りで3700円代がついたといいます。その後も、市場にブランドとして認められるためには、品質の安定化と頭数の確保が必要であり、改善を重ねながら、出荷体制を確保しています。

このように商品の「地域ブランド」化は、公共部門のみでは難しく、民間企業の自助努力によるものが大きいですが、成功すれば地域の内外に「存在意義」を示し、結果として地域の誇りにつながります。観光産業など他の産業との連関性も確保できれば、地域経済の活性化にも寄与することになります。

【ポイント3/3】「続ける」の戦略:外部との交流と人づくり

島の生き残りのためには、人口減少に歯止めをかける必要があります。そして、これまで確認してきた「守り」と「攻め」の戦略も、継続して実行する「人」がいなければ単発の事例となり、持続可能性はありません。第3のポイントとして、海士町流の未来を見据えた「人」づくりについて考察したいと思います。
まず、Uターン、Iターンです。いずれの地域も人口を増やすために定住促進策を行っていますが、海士町でも一般的な住宅政策と共に、子育て支援を行っています。「海士町すこやか子育て支援に関する条例」に基づく各種施策は、財政の厳しい離島としては充実した内容となっています。まさに「守り」によって生まれた「未来への投資」です。結婚祝金や出産祝金、保育奨励金から、妊娠・出産に係る交通費島助成、中には不妊治療のための通院への助成もあり、チャイルドシート購入費助成などもあります。

しかし、最大の問題は、やってきたU・Iターン者の働く場、産業をどうするか、ということです。どの地域にとっても悩ましい問題です。新しい産業創出の試みは先のポイント2で確認しましたが、その他の動きもあります。
例えば、外からやってきた若者たちが立ち上げた「株式会社 巡の環」があります。この事業のひとつに海士「五感塾」があります。これは企業研修ですが、研修所を飛び出し現場で、島の人を講師として、「感じる力」を高め、「人間力」を磨くというものです。

平成26年度ふるさとづくり大賞において、この巡の環が団体表彰(総務大臣賞)のひとつに選ばれています。概要は「人口減少・少子高齢化・財政難といった日本の課題先進地である一方、なりゆきの未来を変え、地方創生に積極的に取り組んでいる離島・海士町を舞台に、地域づくり事業・教育事業・メディア事業を柱として活動している」とあります。評価された点は、「離島という地域でありながら、地域づくりに携わる人材を育てる人材育成産業を作る発想がユニーク」や、「地域づくりにおいては、地域内外のつながりを形成していくことが極めて重要である。そのためには、つなぐ役割を担うコーディネータが重要。このコーディネータ育成を通じての、地域イノベーションの実現に期待がもてる」などです。

巡の輪 阿部裕志代表取締役は、トヨタを辞めて、島で起業することを決意した経緯があります。「海士の面白さは、島にIターンしてくる人たちが、基本的に“攻め”の姿勢で入ってくる」ところであり、「島まるごと持続可能な社会モデルをしている面白い島がある」ことがきっかけといいます。そして、島が「「よそ者、若者、ばか者」を満たす人材に、しっかりと向き合ってオープンである」ことを指摘しています。一般的にIターンには閉鎖的な地域社会の壁が存在しますが、海士町のヒントは、「よそ者、若者、ばか者」が“攻めの姿勢”で入り、地域が彼らをオープンに受け入れた、ということでしょう。

また、島根県立隠岐島前高校の「魅力化プロジェクト」「どきどききらきら 島留学」などの取り組みもユニークです。特別進学コースと地域創造コースを設置し、島外からの「留学生」を受け入れています。少子化で全国の公立学校が統廃合に直面している中、ここでも海士町独自の取り組みがなされています。

海士町では、こうした外部との交流から刺激を受け、「自立する人」をつくることが重要と考えています。先の五感塾の取り組みや、島外から研修生を受け入れて商品開発をすることによって、外へ島の文化や活動、あるいは想いを伝えることができ、内では「外の目」を通して島の良さを再発見し、自らの誇りを確認することができるでしょう。こうした活動が、「人づくり」=地域づくりにつながっているのです。

ただし、外部との交流と刺激は大事にしていますが、コンサルタントを使わないといいます。先の阿部氏も「他の地域で成功しているモデルをそのまま持ってきたり、専門家に答えを求めるといった外の力に過度に依存していないから、海士は独自の進歩を続けてこれた」と指摘しています。「成功例」を視察して、そのまま模倣して地域活性化を…、あるいは、コンサルタントに全て丸投げという地域が多々ありますが、自分の頭で考えて行動しなければ成功しないということでしょう。

【まとめ】地方創生を成功させるには?

海士町の取り組みから明らかになったポイントは、(1)「守り」の戦略としての身を切る行財政改革、(2)「攻め」の戦略による島をまるごとブランド化、(3)「続ける」ための人づくり、でした。

最後に地方創生のための3つのポイントを改めて整理したいと思います。
第1に、民間任せやコンサルタント任せのような他人任せではなく、まず自分から身を切り、改革を実行することです。地方創生は公共部門がまず変革し、本気を見せることが必要です。
第2に、地域の名産を商品化し、地域ブランド化することです。そして他の地域と差別化した情報を発信します。地方創生には公共部門と民間部門が連携してこれを実行しなければ成立しません。こうして地域の存在意義を内外に示します。
第3に、単発に終わらせず持続性を確保するために、人を増やし、育てることです。地域社会がオープンに受け入れ、外の刺激を受けることが重要です。そして、次世代=未来に投資しなければなりません。

これらのポイントは、1つだけでは成立しません。地域ブランドにはどの地域も取り組んでいますが、全てが成功するわけではないからです。地方が生き残り、創生するためには、未来を長期的に展望し、公共部門と民間部門、地域社会の内と外が相互作用しながら、互いに成長していくしかないのではないでしょうか。

<参考文献>
隠岐郡海士町 http://www.town.ama.shimane.jp、
島根県立隠岐島前高等学校 http://www.dozen.ed.jp、
(有)隠岐潮風ファーム http://www.oki-shiokaze.co.jp、
株式会社 巡の輪 http://www.megurinowa.jp、
山内道雄(海士町長)『離島発 生き残るための10の戦略』生活人新書、NHK出版、2007年、
株式会社 巡の輪(阿部裕志+信岡良亮)『僕たちは島で、未来を見ることにした』木楽舎、2012年

地方創生の具体策【ファミリー就職】古くて新しい温故知新の働き方とその15のメリット

突然に降って湧いて出た地方創生は、消費増税を宣告するための布石。地方創生の本質は、住民の奪い合い。何をして地方創生は成功といえるのか?雇用なき成長を実現させるには?第二次安倍内閣の発足から12月までの短い期間で、地方創生を戦略化するには?等々、地方創生の具体案をまとめました

目次

1.地方創生国会の召集と二法案の提出
2.【分析1/3】なぜ急ぐのか?なぜ時間が無いのか?
3.【分析2/3】消費税10%増税を年内に決定するための地方創生
4.【分析3/3】来年の統一地方選を意識しての政策
5.地方創生三つの課題
6.【解決策】あるようで無かったファミリー就職

地方創生国会の召集と二法案の提出

地方創生国会が召集され、まち・ひと・しごと創生法案と、改正地域再生法案が提出されるやいなや、早速、各メディアや評論家、与野党から、

「具体性に乏しい」
「理念だけで、中身が曖昧」
「3兆9,000億円のばらまき」

等々の指摘が相次いでいます。それもそのはず、担当相の石破大臣が、

「何をやるんだい?という具体策がまだ出てこない。地方からアイデアを募り、民間の創意工夫を生かし、10月をメドに論点をまとめ、年内に長期戦略を策定する」

と言及していますから、まだまだ抽象的な初期段階であることは確か。今ここで、対案の無いまま批判するのは、あまりに気の毒というもの。しかし、10月をメドに論点をまとめようというのですから、時間がないことも確か。一日でも早く、一つでも多くの知恵や工夫が求められているでしょう。

そこで、筆者も、一人の民間人として、地方創生の具体策を挙げてみます。まず、与件整理と現状分析から。

【分析1/3】なぜ急ぐのか?なぜ時間が無いのか?

結論から先に述べますと、6月の時点で、「4月に消費税率を8%に増やした影響で、悪化した個人消費が回復する見込みは、7月以降も無さそう。これじゃ、

1)来年の10%増税を、年内に宣告できないし、
2)もしも増税すれば、景気回復の鍵を握る個人消費は、更に落ち込むだろうし、
3)与党は、国民から信を失うし、
4)来年の地方統一選で、与党は惨敗するだろうし、
5)安倍首相は、来年の自民党総裁選に勝てず、安倍内閣は消えるから、

年内に何か手を打たなくちゃ。もう半年しかない。どうしよう?」

「そうだ!個人消費を回復するには、全国津々浦々にアベノミクスを実感してもらおう。名づけて、ローカル・アベノミクス。それには、地方の活性あるのみ」

「よし!半年以内に何か対策を講じて、増税を決めよう。急げ!」

ということでしょう。そう分析しているメディアは、現時点(9月末時点)で、無いようですが。

地方創生は、6月24日に閣議決定された骨太の方針2014の中に出てくるローカル・アベノミクス(第一章第二項「経済再生の進展に向けた基本的方向性」参照)に端を発する「地域活性」のことです(と筆者は分析しています)

なぜなら、内閣官房(首相官邸の中にあった)地域活性化統合事務局が無くなった代りに、まち・ひと・しごと創生本部が新設されたからです。

http://www.kantei.go.jp/jp/singi/index.html

7月15日の毎日新聞によると、自民党行政改革推進本部ワーキンググループは、地域活性化統合事務局を、新設の地方創生本部と合わせて整理・再編する見通しと報じていますから、ほぼ間違いなく、地域活性のための会議体が、まち・ひと・しごと創生本部へ看板を書き換えたと見ていいでしょう。

要するに、地方創生と名称を変えた地域活性は、高度経済成長期から問題提起され続けているにもかかわらず、未だ解決していない、難しい政策です。如何に難しいか、地域活性を冠した社団法人や財団法人の数の多さを検索してもらえば分かる通り、何十人もの専門家やプロ達が、何十年かけても解決できずにいる難易度ウルトラC政策(それを分っていた石破大臣は、当初、就任を固辞したのかも知れません)

それを数ヶ月そこそこで戦略化しようというのですから、ありきたりで行儀のいい知恵や工夫では、まるで、竹下内閣が全市町村へ1億円を配った「ふるさと創生」のような結末に着地すること必至。それでも何故、6月に突然、古ぼけた地域活性の看板を下ろし、さも新しそうに地方創生の看板を掲げたかというと、2つの仮説が成り立ちます。

【分析2/3】消費税10%増税を年内に決定するための地方創生

一つ目の仮説が、来年、消費税を10%へ増税するためです。

ご存知の通り、来年10%に増税するかどうかの判断を、首相は、年内に決めるとしています。年内、つまり、突如ローカル・アベノミクスが現れた6月から半年後の12月です。

当初、4月に消費税を8%へ引き上げた後、個人消費は、駆け込み需要の反動で、6月まで下落するものの(実際に下落し、4月~6月期の実質GDPはマイナス7.1%)、7月以降は持ち直し、秋には回復すると予想されていました。おそらく、安倍総理は、その見込み報告を信じて、昨年、8%増税を決めたのでしょう。

ふたを開けてみれば、アベノミクスで景気は回復したと政府が泣けど叫べど、7月の家計調査や家計最終消費支出を引き合いに出すまでもなく、実際、個人消費は落ち込み続けていますから、このまま12月を迎えた時、良いデフレの影響による好景気を実感できそうなメドが立っていなければ、とてものこと、増税には踏み切れません。

とくに、地方の嘆きは悲痛で、もしも、このまま12月に増税を決めてしまえば、一内閣で二度の消費増税という前代未聞の塗炭に、安倍内閣はもちろんのこと、与党は、国民から信を失ってしまうでしょう。

そこで、12月までに、来年の増税を担保できる、根拠が欲しい。だから年内に、地方創生(=地域活性)を戦略化しようという無謀ともいえる計画を立てたのでしょう。その困難を分っていればこそ、安倍総理は「やれば出来る」と決意表明したのではないでしょうか。

【分析3/3】来年の統一地方選を意識しての政策

各メディアが深読みしている通り、来年の統一地方選を意識しての政策であることは間違いありません。前述の通り、明るい見通しがないまま、12月に増税を決定し、国民の信を失ってしまうと、来年の地方選は、軒並み、与党の惨敗になること必至。

そこで、どうしても12月までに、地方を慰撫できそうな、明るい見通し(プラン)が欲しい。プランに予算を付ければ、地方に希望を持たせるカネを用意でき、その予算を背景に、与党は統一地方選で有利な戦いを展開できます。

たとえば、

「われわれ与党は、地方創生のために、ン兆円の予算を確保し、戦略プランも用意しました。地方創生を実現するための橋頭堡を築いた与党へ票を入れて下さい」

と言えるわけです。そのためには、12月までに、地方創生(=地域活性)を、せめて、戦略レベルで(全体像だけは)決めておきたい。しかし、地域活性の名目のままだと、

「今まで何十年も出来なかったことを、わずか2~3ヶ月で出来るわけがない」

との真っ当な反論に遭いますから、看板を書き換える必要があったのでしょう。だから新しく、地方創生(その実は地域活性のまま)という看板を掲げ、そのための過密スケジュールを組み、地方創生(=地域活性)を推し進めようとしていると仮説立てられます。

地方創生の課題

消費税率を上げたい本音や必要性は良しとしても、地方創生(=地域活性)が難しいのは、過去半世紀の歴史が証明するところ。そこで『なぜ、地方創生(=地域活性)は難しいのか?』理由を探るところから具体案のヒントを見つけましょう。

筆者が分析するところの理由は、3つ。

1.仕事がない
2.地域住民が減少中
3.地方創生(=地域活性)してほしくない

ひとつずつ解説しますと、1の「仕事がない」は、ご存知の通りで、あっても給与が低いか、慢性的に人手不足の(やりたがらない)仕事ばかり。これまで確かに、企業誘致、官営起業、第三セクター等が盛んに行われてきましたし、成功例もあります(失敗例が表に出るハズありません)が、それで地方創生できるのならば、とうの昔に地域活性していたはず。

つまり(まだ気づいていないのかもしれませんが)、官主導や企業主導の民間活動では、地域活性できないのです。なぜなら、巨大組織による民活は、他人のカネ(組織のカネ)を動かして、他人(地方住民)の生活が成り立つよう考えることに他ならず、しょせん他人事(ひとごと)です。

ご存知のように、他人事では、本気になれません。人は、自分に最も興味があります。自分のために動きます。そこに気づかなければ、地域活性など机上の空論。またしても一億円づつバラまくなど、予算(税金)の笑止な無駄遣いに終わるでしょう。

そこで参考になるのが、草の根民活(くさのねみんかつ)。草の根民活(くさのねみんかつ)とは、事業を担うスキルやモチベーションが高い個人による民間活動のことで、社会的な弱者とされる一般市民、地域住民、NPO・NGO等の民間人(小規模集団)、農家や自営業など個人経営者による民活を指します。

企業主導ではない、個人や有志達による活動といえば分かりやすいでしょう。筆者の外部ブレインであるコンサルタントから聞いた話によると、ある地方の町営スキー場は、町営を中止し、アルバイトの女性たちへ経営を任せた年から、万年赤字が、黒字へ転換したそうです。大晦日まで雪が降らない年でも黒字でした。やる気あふれる本人や小集団の草の根民活だからこそ地域活性できるのです。

そうした草の根民活を、国が支援できるかどうか?が問題であって、支援すべきは、企業や自治体といった大組織よりも、そこで働こうと意欲がある民間人=個人や小規模集団。

従来通りに大きなところを大きく援けるのではなく、小さなところを小さく援けることが出来るかどうか?に地方創生の成否は委ねられているといって過言ではありません。
参考リンク:http://www.insightnow.jp/article/8213

次に、2の「住民が減少中」も、ご存知の通り。平成の大合併で、地方自治体毎の人口は増えたように見えても、内実は、仕事がある大都市圏へ人口は流出し続けていますし、石破大臣が、

「地方の雇用は、農林水産、行政、建設、サービス業の4つを、どう伸ばすか考えていくこと」

と述べてはいますが、行政とサービス業は人が相手ですから、住民という顧客が少なければ発展しようがありません。クマやタヌキに住民票や旅行は必要ないのです。

行政やサービス業を伸ばすということは、とりもなおさず、住民(個人と法人)を増やすということです。住民を増やすということは、数値が目標になります。これ(個人と法人の数)が戦略目標になりますから、住民(個人と法人)の数が、どれだけ増えたか?で地方創生の成否を判断できます。増えれば成功、減れば失敗という単純な話です。その目標値と、そこへ至る道すじが設定されていればこそ、戦略たり得ます。

さらに極めつけは、少子高齢化によって、人口が減り続けていること。

これすなわち、地方創生の本質は、地方自治体同士による

「住民のブン取り合戦」

であり、とりわけ、次世代の子供を産み、育てる世代の奪い合いに他なりません。

日本全国1,741市区町村による争奪戦です。その戦いに勝った地方自治体は、生き残るでしょうし、負けた自治体は、高齢者ばかりの限界集落となり、いずれ地図から消えていく末路。

その意味で、石破大臣の、

「知恵と熱意のあるところに国は全面的に応える。人も出し、お金の支援もする。だが、やる気も知恵もないところは、ごめんなさいだ」

との発言は、問題の本質を突いています。「ごめんなさい」=「いずれ限界集落」となり、いつしか地図から消えても、国としては致し方なしということでしょう。

最後に、3の「地方創生(=地域活性)してほしくない」

これが最も大変で、前述の外部ブレインが、地方の企業をコンサルティングしていて身に沁みるのは「よそ者」意識の強さだそうです。

「自分達には、自分達のやり方がある」
「よそ者に、何が分かる」
「今のままで、いいんだ」
「余計な世話は、要らない」

といった保守的な考え方が、地方の特徴との事。

確かに、東京の正論が、地方の正論とは限りませんし、地方には地方の国柄(気候、風土、歴史、ものの見方・考え方)、コミュニティ(地縁、血縁、人間関係)、利権、住み慣れた暮らしがありますから、保守的になるのは致し方のないこととしても、保守政党である自民党の基盤が、政策(地域活性)に対して固陋では、地方創生など絵に描いた餅になりかねません。

ここは、時間をかけて充分に話し合うと共に、広報や広告などメディアを使ったキャンペーンも必要でしょう。このように、地方創生(=地域活性)には、3つの大きな壁があると筆者は分析しています。

【解決策】あるようで無かったファミリー就職

筆者の地方創生案「ファミリー就職」は、3つの課題を全て解決します。

ファミリー就職とは、個人と企業が雇用契約を結ぶのではなく、家族と企業が契約を結ぶ雇用形態です。一般的には、お父さんと企業が雇用契約を結び、会社へ就職します。一方のファミリー就職は、一家と企業が雇用契約を結び、半独立します。

半独立とは、基本的に自営(草の根民活)ですが、運営ノウハウや商品は、契約企業から安定供給されます。つまり、自宅に居ながらにして、家族で商売できます。

この「雇用なき成長」策によるメリットは、

[1]家族が、いつも一緒にいられます
[2]お父さんが入院しても、お母さんが代りに働けます
[3]お母さんも一緒に働けますから、女性が活躍できます
[4]主婦が仕事に忙しくても、ご主人が代りに育児できます
[5]主婦が家事に忙しくても、ご主人が代りに介護できます
[6]子育てしつつ働けるので、人口減少に歯止めをかけられます
[7]就業年齢に達した子供たちも(家族で)働けます
[8]自営ですから、定年退職がありません
[9]上司がいないので、やりたいように自由に商売できます
[10]自宅で開業できます。勤めに出る必要がありません
[11]店舗のように、設備投資(先行資金)が必要ありません
[12]完全独立ではありませんから、契約先の企業をはじめとする仲間がいます
[13]商売が繁盛して、人手が足りなくなれば、新しい雇用が生まれます
[14]従来からの人間関係や、地縁を活かし、地方でも商売できます
[15]やりたい仕事(売りたい商品)の選択自由がありますから、東京へ働きに出る必要がなく、住民の減少を食い止められます

こうした「ファミリー就職」は、新しくもなんともなく、万葉の昔から、日本では、家族総出で、農業や漁業に従事してきましたし、豆腐屋さんや、和菓子屋さんや、床屋さんは、今でも、夫婦揃って商売していたり、事業規模の大きなところは、従業員を雇用して経営を拡大しています。

要するに、三ちゃん企業(父ちゃん、母ちゃん、兄ちゃん)のススメです。

これまで、身内だけで細々と家族経営するイメージが強かった三ちゃん企業の増殖を、国の地方創生策として掲げようというのが筆者の地方創生案です。問題は、ニーズとリピート率の高い商品を供給している都市部の企業が、どれだけ協力してくれるか?です。

筆者が勤務する株式会社たまゆらは、作業用品を販売していますので、ニーズもリピート率も高い作業着や作業用品の供給であれば可能です。しかし、翻せば、作業用品やユニフォーム以外は関与できません(供給できる商品がありません)し、需要があるのは県都までで、町村部には対応できません。

そこで、全国の市町村を網羅すべく、この「ファミリー就職」なる古くて新しい温故知新の草の根民活を、地方創生の一つの具体策として、国が支援できれば、地方で働く人と、都市にある企業と、国の政策である地方創生を結び付ける3-Win(三方よし)になると考えます。

いかがでしょう?忌憚のないご意見を賜れば幸いです。